鹿方鼎

鹿方鼎

国家宝蔵

国宝紹介

鹿方鼎は、中央研究院歴史語言研究所において1935年に河南省安陽殷墟1004号商王大墓の地で発掘・出土した商代の青銅礼器である。鹿が装飾のモチーフであり、本体の四面と四足の内外に鹿の頭を鋳造し、さらに内底部に鹿の形の銘文が鋳造されている。鹿の形の銘文は生き生きとして写実的である。鹿角が分岐する特徴がはっきりと表されている。史語所のロゴマークは、この作品をもとにしている

鹿方鼎は高さ60.9cm、重さ60.4kgである。形のよく似た「牛方鼎」と同じ墓から出土し、いずれも商代としては珍しい、四足長方形の大鼎である。2009年に中華民国(台湾)文化部により、国宝として指定された。

国宝鑑賞

鼎は直方体の形で、底は深く平たくなっており、鼎縁の外に向けて広がっている。
四本の足と二つの耳(把手)がある。
鼎耳に夔龍紋で装飾されている。

      鼎耳の紋飾の拓片。
本体の四隅と中央に扉稜がある。
器腹四面に鹿の頭をモチーフにした主紋を飾る。
鹿角は数本に分岐し、鹿頭の左右両側に猛禽類鳥紋を飾っている。
鹿頭の上下に、さらに夔竜紋があり、その隙間は雲雷紋で埋められている。
鼎足は中空円柱状であり、足の外側には鹿面紋と三角紋がある。

                        鼎足の紋飾の拓片。

鹿の形をした銘文

内底部分に、鹿の形の銘文が鋳造されている。

鹿の形をした銘文。歴史語言研究所のロゴマークは、ここから取られている。

鹿の形をした銘文の拓片である。

参考資料

    1. 考古資料デジタルデータベース
    2. 李永迪編、『殷墟出土器物選粋』、台北市、中央研究院歴史語言研究所、2009。
    3. 陳永発編、『中央研究院デジタル所蔵精品図録』、台北市、中央研究院歴史語言研究所、2012。

所蔵機関

中央研究院歴史語言研究所は1928年に、中国の広州で創立されました。1948年冬に台湾に移転し、1954年に南港の現所在地に落ち着きました。本所はいくつかの学科で構成されており、歴史学・考古学・人類学・文字学などの研究分野が含まれています。本所の研究成果は、国内外の学界からも重視されています。

歴史語言研究所が所蔵する文物は合計14万点余りです。その中には、当所が中国大陸に所在していた時期に発掘・採集した考古遺物約12万点余りが含まれています。他には、居延漢簡が約1万点、中国少数民族文物と文書が2千点余りあります。他にも、内閣大庫明清文書約31万点が収蔵されています。

それらの所蔵を展示するために、1986年より歴史文物陳列館が設置されました。館内の展示は、伝統的な博物館が精品のみを陳列するのと異なり、学術研究成果を中心として展示されています。展示内容には、中国の商周から戦国時代までの遺跡から出土した文物・居延漢簡・貴重な図書資料・内閣大庫の明清檔案・中国西南部の民族文物・豊碑の拓片・台湾考古資料などが含まれています。文物展示と、歴史文物陳列館が主催するイベントを通じ、本所による長年の研究成果を、一般社会の方々とシェアできるようになっています。

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