蟠竜方壺
蟠竜方壺
国家宝蔵
国宝紹介
国立歴史博物館所蔵「蟠竜方壺」は、「獣耳虎足方壺」、「蛇網蓋冠龍虎方壺」とも呼ばれている。一対で出土した物だが、もう1体は現在、北京の故宮博物院の所蔵となっている。
この器は中国河南省新鄭で出土し、春秋時代の中原鄭公大墓のもので、有名な楚式竜耳方壺である。壺は酒器であり、酒や水を入れるのに用いられる。周代の礼制は厳格で、「壺」は必ず2つペアで使用された。方壺は卿大夫が祭祀の饗宴に用いたもので、その文様装飾は精巧かつ華やかであり、他の器物よりもはるかに優れている。
もとは「獣足壺」と呼ばれて『商周彝器通考』に収録されており、青銅製で高さ90.3cm、深さ57cmあるこの器は、長い首、くびれた腰、垂れた腹、囲われた足という姿で、口は外側に向けて広がる形をとり、その広い口の周りには不規則な装飾が施されている。そのスタイルは西周文化の伝統を受け継ぎ、晋と楚の文化の特色が融合していることもわかり、1979年に河南省淅川下寺遺跡で出土した『龍耳虎足方壺』の器形、装飾と類似している。春秋時代の楚式竜耳獣足方壺を代表するものとして、歴史的、文化的に高い価値があることから、2011年に国宝に指定された。
国宝鑑賞
壺は、四角い首を持ち、口は幅広で厚く、その上には透かし彫りの蟠蛇文様を施した蓋が載っている。胸と腹は十文字で仕切られ、首の外観は山形と帯状の双鉤凸線蟠虺紋で装飾されている。壺胸は双鉤凸線蟠虺紋で覆われている。
壺の腹の部分はニンニクのように膨らみ、垂れた腹のような形をして、紋様がなく、両側には双竜の耳飾りがある。下部には長方形に囲われた足が設置され、その下では2頭の虎が壺を受けている。
側面から見た方壺。
壺の蓋は仰帽式、透かし彫りで蛇文様が施されており、失蝋法で作られた青銅器で最も古いものである。蓋の高さは約7.5cmで、網のように見える冠は、S字状に絡み合う20組以上の蛇からなり、生命力を感じさせる精巧な文様となっている。
方壺の首の両側につけられた耳は、立体的な透かし彫りの龍となっており、環がつけられている。
囲われた足の下には、地面に伏す虎が方壺を押し上げているさまが立体彫りで表されており、その身は角状の斑紋で装飾されている。
尻尾を丸めた虎は、姿勢を低くして頭を前に出し、口からは舌を出しているが、その舌先は微かに曲がっている。
参考資料
- 国家文化財ネットワーク(国家文化資産網)
- 国立歴史博物館、河南博物院編、『新鄭鄭公大墓青銅器』、台北:国立歴史博物館、2001。
- 楊式昭、『春秋楚式青銅器転型風格の研究』、台北:国立歴史博物館、2005。
- 国立歴史博物館編、『国立歴史博物館所蔵逸品』、台北:国立歴史博物館、2007。
- 楊式昭、『春秋方壺上の立体装飾品研究』、台北:国立歴史博物館、2016。
所蔵機関
国立歴史博物館は、1955年に国民政府の台湾移転後初めての公共博物館として設立された国立歴史文物美術館を前身としており、1957年に、正式に国立歴史博物館と改称された。
所蔵資料は、初期には教育部から移管された戦後日本からの返還古物および台湾に移された旧「河南博物館」所蔵文物を基盤としていたが、その後各界のご厚意による寄贈や購入などにより年々その数を増し、現在は書画・版画・銅器・陶磁器など19種類5万件余りとなっている。 その顔ぶれは多彩で、古きもあれば新しきもあり、庶民性と日常性を備えている。これら貴重な資料は、すべて「国立歴史博物館所蔵資料検索システム」で見ることができる。