万壑松風図
万壑松風図
国家宝蔵
国宝紹介
「万壑松風図」は、北宋の画家李唐が描いた絹本の軸である。
李唐は北宋末期に生まれ、北宋の徽宗、南宋の高宗の画院(画家を集めた機関)を歴任した。山水画に優れ、早年の画風は険しい筆致を以て、雄大で壮麗な北方山河を描いた。晩年は絵画上の複雑な線は簡略化され、筆の技術は洗練された。構図は精巧に作られ、南宋の新しい画風を切り開いた。
この作品は范寛の〈谿山行旅図〉、郭熙の〈早春図〉とともに、北宋の「巨碑式山水画」の作品である。前の2作と比べ、〈万壑松風図〉は広大で壮観な景観から抜け出ている。作品のテーマは深い渓谷へと転向し、人物や建物を描かずに、幽谷の雰囲気を際立たせている。
この絵画は、北宋の大観山水画を南宋の近景山水画とつなぎ合わせ、両宋の画風の美点が凝縮された、山水画の傑作とされる。現在国立故宮博物院に所蔵されており、「鎮院の宝」の1つとされている。さらに2012年には、「国宝」として指定された。
印章の認識
参考資料
- 倪再沁、「神画の形塑―故宮三宝について論じる」『典蔵古美術』第174期:(2007年)、ページ80-85。
- 余輝、「李唐と後李唐時代の山水画―南渡画家とその子孫たちの芸術作為」『故宮学術季刊』第30期第4巻(2013年)、ページ43-103。
- 李珮詩、〈印鑑の中の栄光&手がかり—『石渠宝笈』の三次編目と钤印などに関する記事〉、『典蔵古美術』第208期(2010年)、ページ84-93。
- 陳韻如、何炎泉執行編集、林柏亭監修、『大観:北宋書画特別展図録』、台北:国立故宮博物院、2006。
- 林柏亭編集、『国宝菁華:書画・図書文献編』台北:国立故宮博物院、2006。
- 蔡玫芬編集、『精彩100:国宝総動員』、台北:国立故宮博物院、2011。
- 劉芳如、浦莉安、陳韻如編、『鎮院国宝:范寛・郭熙・李唐』、台北:国立故宮博物院、2021。
所蔵機関
1925年10月10日に故宮博物院が設立された。中国清朝の皇室に収蔵されていた書画文物は数万点を数え、北京の紫禁城見学も一般開放された。1937年に日中戦争が始まり、故宮博物院の文物は南方に移転され、1945年戦後になりもとに戻った。1948年国共内戦のため、故宮博物院の所蔵品は台湾に移転され、台中霧峰北溝に一時的に保管された。その後台北外双渓に新館が建設され、1965年8月に完成し、11月に正式に外部に向けて開放された。そして2015年12月に、嘉義太保にある南院が正式に開館した。
故宮博物院のコレクションは、宋・元・明・清王朝の宮廷コレクションが元となっており、その後中央博物院準備処の運台文化財に統合された。収集・購入された文化財は約数十万点となり、続々とデジタル化された。それらのファイルは「故宮所蔵資料検索システム」に保管された。その中の一部の文化財のデジタルファイルは、すでに「オープンデータ(Open Data)」サイトに保存され、CC(クリエイティブ・コモンズ) に関し、適正な再利用の促進のために公共に向けて提供しています。