谿山行旅図

谿山行旅図

国家宝蔵

国宝紹介

〈谿山行旅図〉北宋山水画名家の范寛が描いた名作である。范寛は最初、五代(中国の唐以後の朝代)の山水画家、李成と荊浩に師事した。自然に魅了されたため、長年間、山の景色を観察していた。そして、我を忘れて夢中になった心境を水墨画にし、絹布に振りかけ、大作を成し遂げた。千年を超えた現在でも、誇られる名作である。

范寛により、淡い色をもって高山の岩と茂林の滝を描き出し、立体的な空間感が表現された。一方、人物・ロバの小集団は小さくても生き生きとしている。当時の絵画評論家劉道醇には「遠望不離坐外(遠景だが目の前を離れず)」と評され、一見したところ遠景を見ているようだが、目の前にある景色のように現れる。明代の董其昌により、この作品は「宋画の第一」と称賛された。

現在、国立故宮博物院に所蔵されており、郭煕による「早春図」、李唐による「万壑松風図」と合わせ、故宮における鎮院の三宝と呼ばれている。また、絹布が脆いため、貴重な文化財を保護するために、光の照射時間を減らし、実体展示の条件は厳格に決められている。それ故、展覧会は少なくとも、3年以上間隔を空けなければならず、展示期間は42日を超えてはいけない。当作品は2012年に、国宝として指定された。

国宝鑑賞

   絵の構図は簡潔であり、遠景のまっすぐな高山が、画面全体の3分の2を占めている。山腹に漂う雲と霧を余白として、空間の遠隔効果を際立たせている。
   中景は行商隊と後方の山岩と樹叢をメインに、近景は絵の下の奇岩怪石である。主景は遠く、中景は近くに見え、二相の作用をもって、実測しにくい距離感を作り出している。
   范寛はこの絵画に名称をつけていない。
   だがこの絵のタイトルは、明代の書家であり、画家でもある董其昌(1555-1636)により決められたものである。
   山の輪郭が折り線により何層にも重ねて描かれ、短い線により山や岩の凹凸の立体感を表現し、山の険しさを強調している。後代の者はこの表現法を「雨点皴」と呼んだ。つまり、岩のブロックの凹凸を際立たせる技法である。
   山の頭上には、濃い墨の点々とした灌木の茂みが広がっている。当時の画家・書家である米芾(1052-1108)が「山頂には密林が多く作られている」、「遠山は正面から縦方向に、勢いよく切り落とす」と論じたのは、非常に適切な形容である。

   右側の滝は山のくぼみからまっすぐに流れ落ち、高山の勢いを引き立てている。激しく飛び散るしぶきのもやと、ゆらゆらとした霧が、山の中腹で交わり、遠景と中景の自然の境界となり、空間をさらに深く遠くする。
   右側の古代仏教寺院が密林に隠れており、一角だけが露出しており、静かな雰囲気を示している。
   これらの様子から、范寛が宗教にあこがれる意向がにじみ出ている。
   二つの渓流が左右それぞれ下に流れ落ち、高さが異なる河床と大小の石が急流の激しさを増し、乱流泉を形成している。
   左側の僧侶は岩の後ろから歩き出し、いくつの山を越えている様子であり、古い仏教寺院に参拝しようとしている。
   右下は旅の商隊であり、商人は前後に並び、荷物を積んだロバの群れに前進を促している。
   人物は絵の中では小さくて見えにくいが、確かに「渓谷と山での旅」のテーマを掲げている。

印章の認識

参考資料

    1. 王裕民、「谿山行旅図に捺された印章の新発見―その歴代収集者を兼ねる」『故宮文物月刊』第166期(1997年)、ページ46-57。
    2. 倪再沁、「神画の形塑―故宮三宝について論じる」『典蔵古美術』第174期:(2007年)、ページ80-85。
    3. 李珮詩、〈印鑑の中の栄光&手がかり—『石渠宝笈』の三次編目と钤印などに関する記事〉、『典蔵古美術』第208期(2010年)、ページ84-93。
    4. 陳韻如、何炎泉執行編集、林柏亭監修、『大観:北宋書画特別展図録』、台北:国立故宮博物院、2006。
    5. 蔡玫芬編集、『精彩100:国宝総動員』、台北:国立故宮博物院、2011。
    6. 劉芳如、浦莉安、陳韻如編、『鎮院国宝:范寛・郭熙・李唐』、台北:国立故宮博物院、2021。

所蔵機関

1925年10月10日に故宮博物院が設立された。中国清朝の皇室に収蔵されていた書画文物は数万点を数え、北京の紫禁城見学も一般開放された。1937年に日中戦争が始まり、故宮博物院の文物は南方に移転され、1945年戦後になりもとに戻った。1948年国共内戦のため、故宮博物院の所蔵品は台湾に移転され、台中霧峰北溝に一時的に保管された。その後台北外双渓に新館が建設され、1965年8月に完成し、11月に正式に外部に向けて開放された。そして2015年12月に、嘉義太保にある南院が正式に開館した。

故宮博物院のコレクションは、宋・元・明・清王朝の宮廷コレクションが元となっており、その後中央博物院準備処の運台文化財に統合された。収集・購入された文化財は約数十万点となり、続々とデジタル化された。それらのファイルは「故宮所蔵資料検索システム」に保管された。その中の一部の文化財のデジタルファイルは、すでに「オープンデータ(Open Data)」サイトに保存され、CC(クリエイティブ・コモンズ) に関し、適正な再利用の促進のために公共に向けて提供しています。

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