太っちょと痩せぽっちの二人羅漢

太っちょと痩せぽっちの二人羅漢

国家宝蔵

国宝紹介

葉王による「太っちょと痩せぽっちの二人羅漢」という作品は、交趾焼き写実的な人形の一対に属する。

咸豊10年(1860)に台南学甲慈済宮が改築された際、葉王を招聘した。同氏による200点以上の交趾陶作品が、廟頂の中背から本殿内塀、および後殿の塀に安置された。前後合わせて、2年以上の時間をかけて完成された。

この一対の交趾陶はそれぞれ、三川殿の裏側における屋根の、その両側の角に置かれ、二陶偶衣は身を隠すことがない。同じ場所に置かれた「合境平安」という陶製の人形に描かれた派手な服の姿とは、対照的な存在である。それは世の中の真実を反映している。

この作品は、民国69年(1980)盗難に遭った。その20年余り後、縁があって慈済宮に戻ってきたという良いストーリーがある。再び盗難に遭うことを避けるために、他には、これらの100年以上の陶製の人形の風化を減らすために、慈済宮に「葉王交趾陶文化館」を設立し、文物を保管・展示している。

葉王(1826-1887)は、清朝の道光年間に台湾の嘉義で生まれ、広東制陶工人のもとで弟子となった。その作品の題材は、戯文人物・鳥虫魚獣などの生物を含め、多くは廟の装飾に用いられた。人物の表情は生き生きとしており、その活発さをもっても、荘厳さは失われていない。特に「太っちょと痩せぽっちの二人羅漢」の2体陶製の人形は、その表情・体つき・服のしわなどが、実に生き生きとして繊細に作られ、2015年に国宝として指定された。

国宝鑑賞

   「太っちょと痩せぽっちの二人羅漢」という、交趾焼きの作品である。葉王が慈済宮で作業した際に、地元の村の太っていた人と痩せていた人がよく廟に行き、葉王の仕事を見た。葉王がその2人と仲良くし、友達になったことが伝えられたため、2人の様子をモデルとして1対の陶製人形を作り上げた。2人の羅漢を見れば、五官の表情は生き生きとしていており、痩せた骨や肥えて豊満な胸と腹が如実に表現され、陶製人形は動いているようにも見える。
   葉王の作品からは、人物に対する観察力が非常に繊細に伝わってくる。さらに、彼の優れた捏塑技法を通じ、骨と筋肉を曲線状に作り上げた。作品から、同氏の周りの人と事物に対する情熱と誠実さが、見る者に伝わってくる。

   「痩せぽっち羅漢」と呼ばれる交趾焼きの人形である。痩削内凹の頬・突出した頭蓋骨・大きな鼻・陥凹した目・内縮の唇・しわだらけの顔・全身痩骨がある。特に上半身鎖骨が凹み、肋骨が露出している。両腕は細く、ほとんど皮と骨のみになっている。葉王が人体構造をいかによく観察し、全体を知り尽くしていたが見てとれる。

   交趾焼きの「太っちょ羅漢」は温厚で丸々とした顔をしており、のんびりとあくびをしている。「痩せぽっち羅漢」と同じように上半身をさらけ出しているが、「太っちょ羅漢」は胸と腹が豊満になり、貫禄がある体を表している。この陶製の人形は、悠々とした雰囲気を漂わせているので、見る人は思わずにっこり笑ってしまう。
   「太っちょ羅漢」は口を開けてあくびをしながら、鼻の穴も大きくなっている。鼻上部の筋肉がつられて引っ張られ、しわになっている。葉王は筋肉の微細な変化を細かく観察した。その実写的な人形作りをもって、清朝末期の台湾人に対するイメージが垣間見えてくる。

参考資料

    1. 王暁鈴、〈【神明好農情】誰が廟の上であくびをするのか〉、『郷間小路』(田舎の小道)2021年7月号、p.54-55。
    2. 簡栄聡・鄭昭儀、『彩塑風華―台湾交趾陶芸術特集』、南投市:台湾省文献委員会、2001。
    3. 鄭雯仙、『葉王〈八仙過海〉』、台南:台南市政府、2014。

所蔵機関

学甲慈済宮は保生大帝を祀り、明末には先民鄭軍(鄭成功軍)食糧輸送官の陳一桂が海を渡り、さらには白礁慈済祖宮保生二大帝を迎えて来台し(開基保生二大帝とも呼ばれる)、台南将軍渓「頭前寮」に移住・開墾して根を下ろし、その初期に草寮を建て、二大帝を祀った。康熙40年(1701)に廟が建てられ、咸豊10年(1860)に修繕された。その際、廟の壁・塀・外壁・屋根の正稜・垂稜などの交趾陶装飾のため、交趾焼司阜「葉王」を招聘した。「葉王」は、200点余りの作品を創作した。民国69年(1980)に、56点の交趾陶が盗まれたが、失われた36点の葉王交趾陶作品がみつかり、民国92年(2003)に財団法人震旦文教基金会に無償で寄贈された。

再び盗まれないように、慈済宮には「葉王交趾陶文化館」が設置され、「葉王」の作品を保存・展示している。また交趾陶司阜林洸沂により、「葉王」作品の複製品が、元々飾られた場所に置かれた。

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